調律の話③

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今回は「調律の話③」

前回は8世紀頃までの調律の話を書きましたがその続きです。

9~10世紀くらいからポリフォニーのもととなるオルガヌムという二声による合唱法が登場する。第一声は決まっており譜面にも残っているようですが、第一声に合わせる第二声はその場で耳で合わせていたようです。

このオルガヌムが11世紀前後から二声ではなく三声、四声と重ねられるようになり、またそれまでは一音につきひとつの音を重ねていたのが細かな音や第一声の中でいくつか音が変わるなどメリスマ的オルガヌムの形式が見られるようになりました。また16世紀頃になるとさらに複雑化していき、多声や和声といった表現が似つかわしくなってきます。

よく音楽の3要素として
・リズム
・メロディー
・ハーモニー
と言われます。

このハーモニーという概念が出てきたのがこの頃かと思われます。

よく似たような言葉で「シンフォニー」という言葉がありますが、これは「平行オルガヌム」のこと。
第一声に対し平行に4度や5度でつけられるハーモニーのことです。シンフォニーは訳すと「ある響きを合成したもの」となります。

このように10世紀から16世紀にかけてどんどん多声化していくと現行のピタゴラス音律では対応できなくなってきます。
そこで出てくるのが純正律です。

純正律とはピタゴラス音律と違って基準の音からの他の音を導き出します。
例えば「ド」から周波数の比が9:8の音を「レ」、5:4の音を「ミ」 4:3の音を「ファ」 3:2の音を「ソ」 5:3の音を「ラ」 15:8の音を「シ」というようにです。

ピタゴラス音律は「ド」から3:2の音が「ソ」、「ソ」から3:2の音が「レ」と元の音がどんどん変わっていくため段々とズレが生じて和音にした時に響きが不快な時が多くでました。「響きが不快」というのは周波数の比が複雑な整数比になるということです。純正律を使うと周波数の比が単純な整数比になるためとても綺麗な響きになります。

そばにピアノなどの鍵盤楽器がある方は白鍵で適当な和音を弾いてみるとわかりますが、響きが揺れるのがわかるでしょうか?
これに対して純正律で調律したピアノは音が揺れずそのまま減衰していきます。基本的なキーボードはすべて平均律で調律されているのでこれらで純正律の和音を確認することはできません。ただし、ごく一部のキーボードには合唱などの指導用として純正律に近い和音を出せるものもあるそうです。

オルガヌムが多声化していくに従ってこの純正律や中全音律と呼ばれる純正律を改良した調律が使われるようになります。

純正律はバルトロメオ・ラモス・デ・パレーハが1482年に理論的にまとめましたが純正律は転調に対応できないのでいろんな作曲家がそれを転調に対応できるようにずらして調律しました。これが中全音律です。

実はこの時代にはピアノがまだ登場してませんのでピアノ調律師という職業がまだありませんでした。
他の楽器はと言うと基本的には自分で調律出来たようです。

例えばピアノの祖先のチェンバロは形はピアノに似てますが、中に張ってある弦は毎回調律をし直さなければいけませんでした。逆に言えば演奏者が調律できたのです。調律が厳密になってきたのはここ100年ほどの間のこと、それ以前は「ラ」の音がどれくらいの高さかということですら各国でばらつきがありましたのでバッハの時代はもっと大雑把だったのだと推測されます。

話を戻しますが、これ以後19世紀になって平均律が主流になるまではこの中全音律や純正律から派生する調律で西洋音楽は作られていたようです。

続きは調律の話④で。

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