2018年 2月 の投稿一覧

「#」と「♭」と「シ」

音楽記号

今回は「#」と「♭」と「シ」の関係

「#」「♭」「シ」と3つ並べると音楽を思い浮かべた方は正解です。
なぜ「#」や「♭」が誕生したのかを書いていきます。

「#」や「♭」などがなぜ出現したのかを考えることは音楽家でもそうありません。疑問すら感じないかもしれません。

普段レッスンをしていると自分が当たり前だと思っていることが実はそうではないということに気付かされることも多いです。

少し脱線しますが、例えば以前、体験レッスンをしていた時のこと。
(ポワンポワンスタジオは他の多数の音楽教室同様、無料で体験レッスンをしています。CMでした・・・・笑)

「なんでギターって弦が6本あるの??」と体験レッスンを受けに来た小学生に聞かれました。そう言われると・・・どうしてでしょうね・・・

ギターの祖先がリュートなのは知ってますしギターの知識もそれなりにあるはずだったのですがその質問には答えられませんでした。

後で調べると特に理由はないんですね・・・・笑
ただ、弦楽器はもともと弦の増減を繰り返す歴史もありますので長い年月をかけて6弦に落ち着いたというのが正解何だと思います。

確かに様々な楽器を見ているとその楽器の役割にふさわしい音域になっていることが多いです。広い音域が求められる楽器の場合弦の数は多くなりますし、逆に低音域や高音域、楽器の使用用途がメロディー楽器なのか伴奏なのかなどでも必要な音域は変わってきます。

ギターは7弦ギターなどもありますが、低音弦が必要性を感じるギタリストは好んで利用していますし、そうでないギタリストは弦が多いことでネック(左手で握る場所)が太くなりますし、覚えることも多くなります。僕も7弦ギターを試しに弾いてみましたがかなり頭が混乱した記憶があります。

元々低音を足そうとしても良い音を得るのが大変ですし、高音を足そうとしてもこれもおそらく良い音は得にくいのだと思われます。また必要ないものを足すことで混乱を招きますし楽器の値段も当然あがりますので淘汰されていったのだと思います。

・・・・脱線し過ぎましたね・・・

実は「#」「♭」「シ」はすべて元々同じ意味から派生しているんです。

遡ること400年ほど前までは「シ」という音階は当たり前のものではありませんでした。

えっ?じゃあそれまではどうやって音楽を奏でてたの??

といった疑問が湧いてくるかもしれませんが、1200年ほど前は音楽と言ってもオルガヌムといった2声でのハーモニーを奏でるくらいで今私達が聞いているような音楽はまだ誕生していません。

それが1600年くらいにかけてあたりから多声になりハーモニーが出てきてチェンバロやリュートなどが出てきてようやく私達の知っているクラシックらしい音楽になってきた時代背景を考えてもらうと理解し易いかと思います。
かといって「シ」がなかったわけではなく、「ドレミファソラ」までしか明確でなかったと言ったほうが良いかもしれません。

「シ」の音の呼び名も不確かだったようで、低い「シ」が丸い「b」、高い「シ」が四角い「b」で区別されていたようです。

そう言われると♭(フラット)とb(B)って似てますよね。その名残で今もドイツでは低い「シ」はB、高い「シ」はHで区別されています。それが結局イギリスに入ってくる際に「AHCD」ではなく順序の関係で「ABCD」方式が採用され、現在コードはABCD・・・表記されています。

イギリスはピューリタン革命などで1600年台は激動の時代でした。クラシックの世界でも音楽的にはヨーロッパの他の国に遅れていたようですね。

結局この「シ」の音を「高い」、「低い」という表記だったのが現在のように各音階に付くようになったのです。

調律の話④

今回は「調律の話④」

18世紀になると有名なバッハが出てきます。

バッハは平均律クラヴィーア曲集という曲集を書いてます。なので平均律がまるでこの時代からあってバッハが使ってたように感じるかもしれません。実際はこの時代には平均律自体はありましたが、バッハは使用はしてません。これは「良音律」を「平均律」と誤訳された結果だそうです。
本来は「良く調整されたクラビーアのための曲集」という解釈だそうです。

この時代は平均律は認知はされていたようですが、まだ積極的に使用されてはいませんでした。どちらかと言うと否定的な意見のほうが多かったようです。
バッハも平均律に

実際今まで純正律や中全音律を使ってた人たちが平均律を試すとおそらく濁って聞こえたのだと考えられます。特にオーケストラなどではかなり耳障りに感じただろうと推測されます。

平均律が広く使われるようになったのは18世紀の終わり頃です。そもそもそれまで平均律が使われなかったのは聴感的な問題ばかりではありません。たしかに音楽界からも非難の的になることは多かったのですが、実際1オクターブを12に平均的に分けることが難しかったのです。

当時は現代と違ってコンピュータもありません。例えばラの音は基準音ですのですべての調律において440HZですが、ミの音は純正律だと660HZというわかりやすい振動数ですが、平均律だと

659.2551138257

というちょっとコンピュターでもないと判断がつかなさそうな数値になってしまいます。
1秒間に「659.2551138257」の振動数を計るってことですからね・・・それは難しいですね。

実際にこういった研究に勤しんだのは音楽家ではなく数学者たちでした。シモン・ステヴィンという数学者が1600年頃に平均律を数値化することには成功してますがこれを調律に利用しようとする人はいませんでした。

この平均律による調律を可能にしたのはやはり科学の進歩でした。1500年ごろになるとレオナルド・ダ・ビンチなどがネジなどを使用して時代とともに精密な機械が作られるようになります。

1800年になるとヘンリー・モーズリーが精密な金属旋盤を制作できるようになりその結果ピアノを平均律で調律できるピンが完成したそうです。

1840年代になるとロンドンのジョン・ブロードウッド社がピアノを平均律で調律することになります。
音楽家ではドビュッシーのように平均律の調律を前提に曲が作られたのもとても大きな時代の流れとも言えますし、平均律のピアノが大量生産されるようになったりと時代が平均律を求めていたようにも感じます。

そもそも音楽理論もどんどん複雑になり、転調が当たり前になってくるに従って旧来の純正律や中全音律では適応できなくなったのです。
このようにして20世紀になると西洋音楽は平均律がポピュラーになり、その結果前衛音楽の台頭や無拍子の音楽、ジャズなど平均律と相性が良い音楽の出現などにも関係してきます。

しかし近年、逆に古典調律で演奏する演奏会なども増えてきているようです。確かにその当時の調律で聞いたほうが曲本来の響きを味わうという点では良いのかもしれませんね。

調律についてどうでしたか?知ってないことがたくさんあったのではないでしょうか?

調律の話③

今回は「調律の話③」

前回は8世紀頃までの調律の話を書きましたがその続きです。

9~10世紀くらいからポリフォニーのもととなるオルガヌムという二声による合唱法が登場する。第一声は決まっており譜面にも残っているようですが、第一声に合わせる第二声はその場で耳で合わせていたようです。

このオルガヌムが11世紀前後から二声ではなく三声、四声と重ねられるようになり、またそれまでは一音につきひとつの音を重ねていたのが細かな音や第一声の中でいくつか音が変わるなどメリスマ的オルガヌムの形式が見られるようになりました。また16世紀頃になるとさらに複雑化していき、多声や和声といった表現が似つかわしくなってきます。

よく音楽の3要素として
・リズム
・メロディー
・ハーモニー
と言われます。

このハーモニーという概念が出てきたのがこの頃かと思われます。

よく似たような言葉で「シンフォニー」という言葉がありますが、これは「平行オルガヌム」のこと。
第一声に対し平行に4度や5度でつけられるハーモニーのことです。シンフォニーは訳すと「ある響きを合成したもの」となります。

このように10世紀から16世紀にかけてどんどん多声化していくと現行のピタゴラス音律では対応できなくなってきます。
そこで出てくるのが純正律です。

純正律とはピタゴラス音律と違って基準の音からの他の音を導き出します。
例えば「ド」から周波数の比が9:8の音を「レ」、5:4の音を「ミ」 4:3の音を「ファ」 3:2の音を「ソ」 5:3の音を「ラ」 15:8の音を「シ」というようにです。

ピタゴラス音律は「ド」から3:2の音が「ソ」、「ソ」から3:2の音が「レ」と元の音がどんどん変わっていくため段々とズレが生じて和音にした時に響きが不快な時が多くでました。「響きが不快」というのは周波数の比が複雑な整数比になるということです。純正律を使うと周波数の比が単純な整数比になるためとても綺麗な響きになります。

そばにピアノなどの鍵盤楽器がある方は白鍵で適当な和音を弾いてみるとわかりますが、響きが揺れるのがわかるでしょうか?
これに対して純正律で調律したピアノは音が揺れずそのまま減衰していきます。基本的なキーボードはすべて平均律で調律されているのでこれらで純正律の和音を確認することはできません。ただし、ごく一部のキーボードには合唱などの指導用として純正律に近い和音を出せるものもあるそうです。

オルガヌムが多声化していくに従ってこの純正律や中全音律と呼ばれる純正律を改良した調律が使われるようになります。

純正律はバルトロメオ・ラモス・デ・パレーハが1482年に理論的にまとめましたが純正律は転調に対応できないのでいろんな作曲家がそれを転調に対応できるようにずらして調律しました。これが中全音律です。

実はこの時代にはピアノがまだ登場してませんのでピアノ調律師という職業がまだありませんでした。
他の楽器はと言うと基本的には自分で調律出来たようです。

例えばピアノの祖先のチェンバロは形はピアノに似てますが、中に張ってある弦は毎回調律をし直さなければいけませんでした。逆に言えば演奏者が調律できたのです。調律が厳密になってきたのはここ100年ほどの間のこと、それ以前は「ラ」の音がどれくらいの高さかということですら各国でばらつきがありましたのでバッハの時代はもっと大雑把だったのだと推測されます。

話を戻しますが、これ以後19世紀になって平均律が主流になるまではこの中全音律や純正律から派生する調律で西洋音楽は作られていたようです。

続きは調律の話④で。

調律の話②

今回は「調律の話②」

数学者と音楽はすぐには頭の中では結びつかないかもしれませんが、音=振動と考えると数学的なイメージを持ちやすいと思います。

以前どこかで書きましたが皆さんが聞いている音階は実は振動数により音程が決まります。例えば1秒間に440回振動することでラの音がでたり、1秒間に660回振動することでミの音が出たりします。

逸話によるとある日鍛冶屋の前をピタゴラスが通った時に鍵屋の打つハンマーの音が心地の良い協和音を出していることに気づきます。そこで興味を持ったピタゴラスがそのハンマーを調べると5本あったハンマーのうち4本の重量が12:9:8:6という数比の関係にあることに気づいたそうで、弦楽器や笛などでも実験してみると弦の長さの比率が振動数と比例し、その結果振動=音程なので弦の長さを調整することで音程を調整できることを発見します。

この理論により導き出された調律法は「ピタゴラス音律」と呼ばれ現在の調律法の礎となりました。

【ピタゴラス音律】
ピタゴラス音律を説明すると周波数比を3:2にすると完全5度という音程が生まれます。例えば先程660回の振動がミで440回の振動がラだと言いましたが660:440=3:2となります。

これで「ラ・シ・ド・レ・ミ」とラを1度とするとミが5度になるいう関係が生まれます。

ここからは普通に説明すると複雑な話になるので簡潔に説明しますが、
次にミから完全5度上を作ると「シ」が出来ます。同じように「シ」からは「ファ#」が「ファ#」からは「ド#」というように「ド#」→「ソ#」→「レ#」→「ラ#」→「ファ」→「ド」→「ソ」→「レ」→「ラ」というよに一巡します。

「ラ」→「ミ」→「シ」→「ファ#」→「ド#」→「ソ#」→「レ#」→「ラ#」→「ファ」→「ド」→「ソ」→「レ」→「ラ」

という具合です。これをまとめると
「ド ド# レ レ# ミ ファ ファ# ソ ソ# ラ ラ# シ ド」
という12に音程を分けることができます。

※尚これらの音階は現在の音程とは異なります。現在の平均律の音階とは音の高さが違います。

ピタゴラス音階がその後実際に使われたかというとそれほど厳密ではなかったのだと思います。

11世紀ごろになるまでは音を重ねても2音でハーモニーを奏でる程度だったようです。
現在の音楽を語る上で欠かせないのが「キリスト教の登場」です。

紀元前6~4年頃キリストが誕生し、その後ヨーロッパ中に広がります。

キリスト教といえば聖歌や賛美歌を思い浮かべる方も多いかと思いますが、最初のうちは単一の旋律(モノフォニー)で歌うことがほとんどだったと考えられますがそのうち段々それが4度や5度でハーモニーを奏でるようになりました。

実はこのハーモニーを奏でるという事はキリスト教音楽だけに見られるのではなく、日本の雅楽やガムランなど西洋音楽の影響を受けてないと思われる音楽にもあるため調和のとれた音を認識する感覚というのはどの民族にもあるのだと思います。

8世紀前後から教会音楽は形式がだんだんと確率されていきます。
それまではビザンツ聖歌や古ローマ聖歌、ガリア聖歌といったようにその地方の言葉で聖歌を歌っていたようですがフランク王国のカール大帝が800年に西ローマ帝国の皇帝になってからこれらを統一する方針を打ち出しました。

続きは調律の話③で。

調律の話①

今回は【調律の話】

楽器を演奏している方で楽器に調律が必要な方は大勢います。
ギターやベース、ウクレレ、バイオリン、ピアノ、フルートなどなど・・・・

ギターなど自分で調律(チューニング)できる楽器は良いのですが、ピアノとなるとそうはいきません。ポワンポワンスタジオでも日進校はピアノコースがありますのでピアノが3台、ほぼ毎日稼働しています。定期的に調律はしてもらうんですが、調律師さんと話しているとその奥深さがわかります。

ピアノは鍵盤楽器ではありますが構造からすると弦楽器とも言えます。中に200本以上の弦が張られており、チューニングピンをまわして音を調整します。ギターは6本、ウクレレは4本ですから200本チューニングってすごいですよね。

一つの鍵盤に2~3本の弦が張られているので3本で音程をわずかにずらしたりすると音が厚くなったりといろいろな工夫があるようです。電子チューナーで合わせることも出来るらしいのですが良い調律師さんだとアーティストの望んでいる音にチューニング出来たり、その日の温度や湿度、音の響き方などで微妙に出る音を調整するらしいです。

昔、「もののけ姫」が映画化された際に久石譲さんがインタビューでピアノの調律について、「腐る一歩手前の調律」と希望されたような話を読んだ記憶があります。

現在の調律法は十二平均律というすべての音階を平均化した調律法が取られていますがドビュッシーが登場した前後までは別の調律法でした。※ドビュッシーははじめて平均律を使用した作曲家と言われています。

調律の話をするにはまず調律の歴史の話をしなければいけません。
逆に調律の歴史を知れば調律についてかなり理解できるようになると言っても過言ではないでしょう。

私たちは現在当たり前のように音楽を聞いてますが、ドレミファソラシドは人類が生まれたときから存在していたわけではありません。そもそも大正より前には日本にはドレミファソラシドの概念はなかったのです。僕らが大昔のものと認識している童謡や民謡などもほとんどはそれ以降に出来たものです。

逆にドレミファソラシドが日本に入ってくる前の音楽を聞く機会はほとんどありません。みなさんのスマホにも当然入ってないでしょう。せいぜい、祭りのお囃子やTVでごくたまに聞かれる雅楽程度かと思います。

例えば正月なると様々な場所で聴かれる「春の海」という箏と尺八の曲があります。
この曲なんかはもしかすると何百年も前の曲と思っている人もいるかもしれませんが昭和4年の曲です。

この世界にドレミファソラシドがいつうまれたかという議論はなかなかいろいろな見方ができるので難しいのですが1オクターブを12に分けられたのは紀元前6世紀頃と言われています。

ではそれまではどうしていたかというとみなさんがお風呂で鼻歌を歌うように単音で適当な音程で歌が歌われ口伝により伝わっていたのだと思います。一応3400年ほど前の石版から楽譜的なものは見つかっていますし紀元前2000年ほど前にも演奏方法を記したものが見つかっています。ただしその頃のものは全音階で出来ていたそうです。

音程を12にわけることを発見したのはピタゴラスだと言われています。
ピタゴラスは言わずと知れた三平方の定理を発見した数学者です。
※実は発見していないという説が有力ですが・・・・

続きは次回調律の話②で。