ビデオクリップ

楽曲という作品=商品の宣伝媒体であると同時に、それ自体が1つの映像作品=商品となっているビデオクリップは、その出発点から根本的な二面性を抱え込んでいる。

宣伝媒体と捉えるならば、音と映像統合したビデオクリップ作品においても大切なのは音であって、映像は副次的でしかない。映像は、音を聴く体験の純粋さを満たす余計な要素として、聞き手の想像力への制約として、指弾されることにもなる。しかし、見方を変え、ビデオクリップ自体を自立した映像作品=商品と捉えるなら、映画に代表される通常の映像作品とも、テレビCMとも異なる映像表現が新しい形態としてビデオクリップを位置づけることもできる。ビデオクリップの長さは楽曲の長さによって決まり、平均して4分程度だが、これは映画など通常の映像作品よりは短く、テレビのCMよりは長い時間である。大半のビデオクリップは、映画やシーエムよりはるかに低予算で製作されるが、1秒当たりの費用考えれば、シーエムにはもちろん及ばないものの、映画よりは金のかかった映像である。そしてCMが特定商品等の宣伝という使命至上命題を抱えるのに対し、映画館自主的な表現形態だとすれば、ビデオクリップはその中間の曖昧なイチで、新たな映像実験が行われる場を形成しているのである。

MTV

MTVは固有名詞としてでなく、普通名詞の他のケーブルテレビ1,000音楽専門チャンネルや、ビデオクリップを中心とした定期の音楽番組を指す場合もあるので、注意が必要だ。MTVのネットワーク以外にも、アメリカではTNNやVHI、欧州ではフランス語のMCM、また日本でも音楽専用のチャンネルのスペースシャワーが存在する。テレビ番組としてはMTVと紛らわしいソニースミュージックTVなどが今までもあったし、かつてはポッパーズMTVも存在した。さらに本来は雇用だがビデオクリップの意味でMTVが用いられる場合も少なくない。1981年8月からサービスを開始した本家アメリカのMTVは、1,990余年の資料によれば全米のCATV8324曲を介して、5830万世帯に供給されていた。MTVのネットワークは、特に1990年代に入ってから全世界的に広がり、欧州、中南米、豪州、日本、アジアなどを対象にそれぞれの地域事情に合わせた番組の供給が行っれている。MTVは音楽専門チャンネルではあるが、比較的初期からスポーツやファッション、さらにニュースなど音楽以外の分野についてのアバンギャルドな番組も放送しており、若年層のライフスタイルをトータルに映し出す鏡としても機能している。

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