ロックという音楽フォーマット

ロックという音楽フォーマットの著しい特徴は、個人ではなくグループによって音楽が満たされていることを臆面もなく観せたことである。

クラシックの作曲家が、今日に至るまで作品を個人の署名なるものとしているのと対照的だ。プレスリーやチャックベリーに代表される50年代はそれでも個人の名前が前面に出ていたが、60年代なるとグループが対になってくる。ビートルズ、ストーンズ、ビーチボーイズなどいずれも作詞作曲はメンバーの1人から2人がほとんど手がけてるにせよ、それを音楽にするのはグループだった。

70年代に入るとクロスビーやスティルスやナッシュ&ヤングとかエマーソンやレイク&パーマといった英語の羅列のようなスーパーグループが現れるが、それはグループの再編成であってグループで音楽を作るというやり方は変わらない。さらにロックミュージシャンの背景には彼らを育んだミュージシャンズコミュニティーの存在がある。そのコミュニティーは、あまり多くない方が良いようだ。
小さな場所で色々なタイプのミュージシャンが混ざり合っている方が相同性があるらしい。ブルース、R&B、フォーク、ジャズが入りまじった60年代のロンドンや、ヒッピーカルチャーというコミューン的な基板の上に乗っていた60年代後半のサンフランシスコロックジャズ現代音楽が混合した80年代のニューヨークのlower east sideなどがそうした真の実例として挙げられよう。

60年代のロンドンについて言えばブリティッシュブルースの父であるアレックス・アレクシスコナーのブルースインコーポレーテッドにはチャーリーワッツがいたし、神社ベイカー、ジャックブルース、そしてミックジャガーも彼らとプレーした。もう1人のブルースの功労者ジョン・メイリーオールのブルースブレイカーズには、エリック・クラプトン、ピーターグリーン、ミックテイラーなどが在籍した。ブルースにはのちにクラプトンとクリームを形成するがその前にグラハムボンドとR&Bグループを組んだ。このグループの初代ギタリストは今やジャズ界のスターであるジョンマクラフリンだった。

そうした人々がみなロックというフォームへ流れ込んだのが60年代後半という時代だった。別な流れとは言え、いわゆるブリティッシュプログレも、UFOクラブのような場を介して、そうしたコミュニティーを形成していたものと思われる。キングクリムゾンのアルバムにBritish jazzのそうそうたる顔ぶれが参加しているのも、ソフトマシーンがだんだんジャズグループになっていったのも、こうしたミクスチャーな環境があったからだろう。
のちにジャズピアニストのキス・ティペットと結婚したボーカリスト、ジュリードリスコルをフューチャーしたブライアン・オーガ&トリニティの「street noise」、サックスのディック・ヘクストル=スミスらが参加したジャックブルースのソングフォーアテレテイラーなどのアルバムにはそうした当時の雰囲気が感じられるが、なんといってもおかしいのはセンチピードのセプトーバーエナジーというアルバムだ。

ソフトマシーン、キングクリムゾン、ギフテッドグループ、ニュークリアスなどから総勢20年を超えるメンバーが参加したムカデを意味する超スーパーグループも音もムカデみたいにごそごそと鈍い、壮大な失敗作である。

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