コンボオルガン

モンキーズのTVショウやグループサンズに胸ときめかせた世代にとって、そして80年代以降のガレージサウンド好きにとって、コンボオルガンによって演奏された印象的なフレーズは忘れられないものだろう。そしてドーアーズでのでレイマンズレイクのプレイ。コンボオルガンの音は、そのエッジのたったブライトさで、急に場の空気が変わったかのように前に飛び出してくるのだ。それまで、キーボードは家具だった。そしてどこかおぼっちゃまだった。だがコンボオルガンは工業製品の香りがした。

ガレージでポップな音楽に木目調は似合わない。そしてそのようなミュージシャンはVOX、FIRFISIA、エーズトーンといったコンボオルガンを好んだ。ハモンドの正弦波の波形に対し、コンボオルガンは倍音を多く含んだ電子発振のことで、波形も角をもった幾何学的なものだ。ロータリースピーカーのように音を豊かにする装置もなく、ダイレクトなスイッチングによる発音。音だけでなくルックスもサイケだ。そして目立ちたがりやのプレイヤーが立って弾くには細いクロームメッキの足腰に前身が見えることが重要だったりして。ハモンドは本格的派でリッチだが、コンボオルガンが不良で若い。普通という音。生い立ちからエレキだ。チープでいかがわしクテサイケそれがロックだ。

エレクトリックピアノ

エレクトリックピアノとエレクトロニックピアノは全く別の楽器である。エレクトリックピアノはエレキギターやエレキベース同様物理的な振動を基にした前期増幅系のピアノであり、フェンダーローズやウーリンツァは、コロンビアのエレピアなどが代表的な機種。ちょっとビブラフォンに似た音色がする。

エリクトリックピアノの全盛期は70年代であり、現在は製造中止になっているものが多くヴィンテージ化している。対するエレクトロニックピアノはシンセサイザーなどと同様、電子的な発振回路を音源にしている。エレクトリックピアノと比べるとコンパクトで軽いものが多い。かつては音色がチープという難点があったが、最近のものはピアノやエレクトリックピアノ、チェンバロなどさまざまな鍵盤楽器のとPCM音源化して搭載し、MIDIも装備するなどして、いわゆるデジタルピアノ化している。キーボードのついていない、音源モジュールとしてのピアノモジュールなども出されている。

ロックにおけるキーボードスタイル

ロックにおけるキーボードのスタイルは大きく黒人音楽からの流れ。ブルースやブギウギスタイルのピアノと、西洋音楽からの流れであるバラード曲のピアノやプログレッシブロックに見られるクラシック的な奏法に分けられる。もちろんその2つを加味したようなスタイル。ロックは元々ジャズよりもっと低年齢層を中心に支持され反社会性や半アカデミズムを特徴にしてきたという事情もあり、使われるコードやスケールはシンプルだ。コードはスリーコードのロックンロールパターン、テンションはセブンスどまりでほとんど使われず、スケールもだれでもすぐ弾けるブルーノートやテンションノート中心。逆にピアノやオルガンでは前打音やグリッサンド、トレモロなどのラフでワイルドな奏法がよく使われる。

オルガンではその他に持続音系の楽器という特性を生かした、高音でのペダルポイント奏法がある。この指で高い音を伸ばしっぱなしにして、ほかの指でフレーズやトレモロ奏法でエキサイティングな効果を生む。ロックンロールが誕生した50年代から60年代半ばまでは、歌やコーラスがビートやコードの上に乗ったポップスタイルの楽曲が中心で、楽器のテクニックで聴かせるプレイヤーはあまりなかった。
ところが60年代半ばすぐにサイケデリック、ニューロック、ハードロック、プログレッシブロックなどの新しい傾向が生まれ、ロックにもそのような長いインプロビゼーションが導入されたり、様々なジャンルのサウンドが取り入れられるようになった。

そしてギタリストにエリック・クラプトン、ジェフベック、ジミーペイジといったスタープレイヤーが生まれたように、キーボードプレイヤーの中からもテクニックもさることながら、派手なコスチュームやアクションで人気を集めたキースエマーソンやリックウェイクマン等のスタートキーボードプレイヤーが誕生した。キースやリックはまた、オルガンやモーグシンセサイザーやピアノやメロントロンやクラビネットなど何台ものキーボードを並べ、左右同時に違うキーボードを引いたり、曲によって使うキーボードを書いたりするマルチキーボードスタイルを定着させた。ハモンドオルガンのリバーブユニットを楽器ごと揺らして衝撃音を出すディープ・パープルのジョンロード、オルガンの下敷きになって逆さまから引いたり、パワーを瞬間的にオフにしてハモンドのトーンホイールの回転不安定にし、狂った音程を出すなどの荒業お見せるキースエマーソンなどは、スタイルとしてよりもパフォーマンスとしてのロックの文脈の中でむしろ、チャックベリーのダックウォークの延長線上に捉えるべきかもしれない。

近年のシーケンスソフトを使ったコンピュータによる打ち込みの一般化と見てによる実現した互換性は、クセのあるキーボードやプレイヤーを激減させるという負の面もあった。現にロック界はスターキーボードプレイヤー不在であり、キーボード専門誌には新製品の解説ばかり載っている。

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